2016年04月20日
「経年劣化は大家の負担」 敷金の返金額 診断士の査定で適正に
東京新聞TOKYOweb 2016年3月24日に掲載されました。

年度末や年度初めは引っ越しシーズン。賃貸で家や部屋を借り換えるという人も多い。そこで気になるのは、入居時に預けた敷金がどれだけ返ってくるかだ。専門家に聞くと、大家側からの請求額と本来の適正額に開きがある例も少なくないようだ。(三浦耕喜)
畳二万五千二百円、壁紙一万円、じゅうたん四万九千四百円…。愛知県内の男性が大家側から受け取った「敷金返還計画書」には、補修が必要な箇所と敷金から差し引く金額が並ぶ。七年暮らした2LDKのマンション。家賃は七万五千円で、敷金は二十二万五千円だった。原状回復のため敷金から差し引く費用は計十七万八千四百十六円。返金されるのは四万六千円余りだ。
「国土交通省のガイドラインに基づいて査定し直すと、敷金から引かれる金額は二十九円のみとなります」。こう言うのは、名古屋市中区の敷金診断士、浅井世郎さんだ。これまでに敷金査定の現場を二千件以上見てきた。
敷金診断士とは、NPO法人「日本住宅性能検査協会」が認定する有資格者のこと。二万円程度からの手数料で査定を引き受ける。
国交省のガイドラインは、普通に暮らしている上で生じる経年劣化を補修するための費用は、月々の家賃に含まれているとの見解を示している。「古くなった畳の表替えの場合、これは大家が次の入居者を確保するために物件を維持管理することに相当する。大家の義務であり、借り主に転嫁する理由はない」と浅井さんは指摘する。
壁紙で一万円が請求されているのは、エアコンを設置した跡を補修するための費用。これも、浅井さんは「エアコンはもはや必需品。設置によって生じたビス穴などは普通に暮らす上での損耗だ」として、大家が負担すべきだと言う。
じゅうたんや床材のクッションフロアは、ガイドラインによると、素材や元値によらず設置後六年で残存価値が一平方メートル当たり一円として計算する。「入居から七年たっているので、価値は一円。面積を掛け合わせ、計二十七円と査定しました」と説明する。残る二円は、消費税だ。
部屋のクリーニング代も、借り主が普通に掃除してきれいにしておけば、専門業者による掃除は次の入居者確保のためとして大家が負担するのが筋という。「『クリーニング代は借り主が払う』という一文が契約書にある場合もありますが、これは『必要な場合』と解釈すべきだ」とアドバイスする。
洗面台の扉が壊れて新しい物に交換するような場合も、新品では原状回復以上の利益を大家側に与えることになる。「その場合も減価償却を考えて、大家側との負担割合を決めるべきだ」と指摘する。
最近は「敷金」名目ではなく、「内装工事費」や「修理費分担金」、「一時金」や「定額補修費」などとして、借り主に負担させる例も多いという。「入居時にあいまいな文言が記されている契約書に注意してほしい」と言う。
敷金診断士は、弁護士ではないので、借り主に代わって大家と交渉することは禁じられているが、専門的見地から意見を聞くことができる。浅井さんは「査定した金額を基に借り主が交渉すれば、九割以上で大家との話し合いがまとまる」と話している。インターネットで、「敷金診断士」や居住する都道府県名などで検索する。
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年度末や年度初めは引っ越しシーズン。賃貸で家や部屋を借り換えるという人も多い。そこで気になるのは、入居時に預けた敷金がどれだけ返ってくるかだ。専門家に聞くと、大家側からの請求額と本来の適正額に開きがある例も少なくないようだ。(三浦耕喜)
畳二万五千二百円、壁紙一万円、じゅうたん四万九千四百円…。愛知県内の男性が大家側から受け取った「敷金返還計画書」には、補修が必要な箇所と敷金から差し引く金額が並ぶ。七年暮らした2LDKのマンション。家賃は七万五千円で、敷金は二十二万五千円だった。原状回復のため敷金から差し引く費用は計十七万八千四百十六円。返金されるのは四万六千円余りだ。
「国土交通省のガイドラインに基づいて査定し直すと、敷金から引かれる金額は二十九円のみとなります」。こう言うのは、名古屋市中区の敷金診断士、浅井世郎さんだ。これまでに敷金査定の現場を二千件以上見てきた。
敷金診断士とは、NPO法人「日本住宅性能検査協会」が認定する有資格者のこと。二万円程度からの手数料で査定を引き受ける。
国交省のガイドラインは、普通に暮らしている上で生じる経年劣化を補修するための費用は、月々の家賃に含まれているとの見解を示している。「古くなった畳の表替えの場合、これは大家が次の入居者を確保するために物件を維持管理することに相当する。大家の義務であり、借り主に転嫁する理由はない」と浅井さんは指摘する。
壁紙で一万円が請求されているのは、エアコンを設置した跡を補修するための費用。これも、浅井さんは「エアコンはもはや必需品。設置によって生じたビス穴などは普通に暮らす上での損耗だ」として、大家が負担すべきだと言う。
じゅうたんや床材のクッションフロアは、ガイドラインによると、素材や元値によらず設置後六年で残存価値が一平方メートル当たり一円として計算する。「入居から七年たっているので、価値は一円。面積を掛け合わせ、計二十七円と査定しました」と説明する。残る二円は、消費税だ。
部屋のクリーニング代も、借り主が普通に掃除してきれいにしておけば、専門業者による掃除は次の入居者確保のためとして大家が負担するのが筋という。「『クリーニング代は借り主が払う』という一文が契約書にある場合もありますが、これは『必要な場合』と解釈すべきだ」とアドバイスする。
洗面台の扉が壊れて新しい物に交換するような場合も、新品では原状回復以上の利益を大家側に与えることになる。「その場合も減価償却を考えて、大家側との負担割合を決めるべきだ」と指摘する。
最近は「敷金」名目ではなく、「内装工事費」や「修理費分担金」、「一時金」や「定額補修費」などとして、借り主に負担させる例も多いという。「入居時にあいまいな文言が記されている契約書に注意してほしい」と言う。
敷金診断士は、弁護士ではないので、借り主に代わって大家と交渉することは禁じられているが、専門的見地から意見を聞くことができる。浅井さんは「査定した金額を基に借り主が交渉すれば、九割以上で大家との話し合いがまとまる」と話している。インターネットで、「敷金診断士」や居住する都道府県名などで検索する。
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タグ :引越敷金返還トラブル
Posted by 敷金診断士 at
09:12
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