危ない訳あり物件
そもそも「訳あり物件」とは、どんな物件のことを指すのでしょうか。
訳あり物件とは、何らかの意味で瑕疵(かし)、すなわち欠陥がある不動産のことですが、大きく分けて4つに分類できます。
一つ目が、建物の傾きや土壌汚染などの「物理的瑕疵」。二つ目が、建築制限など、法令上の制限にひっかかる「法的瑕疵」。三番目が、電車の振動、日照被害などの「環境瑕疵」です。
そして最後が「心理的瑕疵物件」です。「事故物件」と言われることもあります。居住者が自殺した、殺人事件があった、住人が孤独死したといったケースです。物理的、法令上の問題がなくても、住人の心理に影響を及ぼしうるケースですね。
ーーもし契約したあとで瑕疵が見つかった場合、損害賠償を求めたり、契約を解除したりすることは認められるのでしょうか。
裁判所は、そう簡単には認めてくれません。特に心理的な瑕疵の場合、明確な基準があるわけではなく、まさにケース・バイ・ケースです。
参考になる裁判例を紹介しましょう。家族と住むために中古マンションを購入したけれど、後になって売主業者の社長の妻が、この物件で約6年前に首つり自殺をしていた事実が判明し、買主が売主を相手取って、契約の解除と手附金の返還などを求めたケースでした。
裁判所は、約6年前に首つり自殺があった物件を、ほかの物件と同様に購入することは通常考えられない、通常、人が住むには著しく妥当性を欠いていると判断して、売買契約の解除と損害賠償を認めました(横浜地裁平成元年9月7日)。
事故ではなく自殺だった点や、建物が建て替えられておらず、まさにその物件が自殺の場所だったことにより、瑕疵の程度が大きいと判断されたのではないかと思います。
この他にも裁判例はいくつもありますが、契約の解除まで認められるケースは少ないですね。賠償金すら認められない場合もあります。訳あり物件から身を守る最大の方法は、事前に見抜くということなのです。